この「関あじ」「関さば」系群説にも科学的な裏付けがあります。 大分県水産試験場は、佐賀関周辺の速吸の瀬戸で「関あじ」の稚魚が生まれ育ち、佐賀関沖の漁場に住みつくらしいことを、稚魚の研究で確認しています。 また15cm位の1才魚から大きいものでは1kg近くにもなるようなアジが同じ場所で釣れる事。前述したように特有な外環を持つ事に加え、他の海域のアジが少し青黒味がかっているのに対して「関あじ」は、瀬付き魚特有の金色味を帯びている事等は、「系群」である事の有力な証拠です。 「関さば」についても同様な研究結果が報告されています。特に、大分大学の望月先生の、「関サバ」の脂の量が、一般のサバと異なり一年中ほぼ一定しているという研究結果は、「関さば」が「系群」だという事の有力な裏付けと思われます。
「関あじ」「関さば」が「系群」だとすれば、この美味しさは、佐賀関ならではのものだという事がいえます。
また、佐賀関の漁場特性として、一年を通じて水温の変化が少ない事があげられます。夏はよそより冷たく、冬は暖かいのです。 この現象は、緒方教授(元大分大学)の研究でかなり解明されています。先生は、ランドサットのデータから海水表面の温度を分析し、冬には黒潮分流の影響が強まって暖かく、夏には深い海底からの冷たい水がわき上がり(湧昇流) 南の海域より6度以上、北の海域より3度以上も水温が低くなっていると報告しています。 この海域特性、特に夏場の湧昇流に含まれる栄養分が餌生物を増やし、かつ「関あじ」「関さば」の身を引き締める一要因になっていると考えられています。
「お魚博士」末広恭雄氏は、「マサバのうち、横腹に1本薄い金色の筋の入っているのはとびきり上等で、たいてい高級料亭に直行してしまうので、われわれの目に触れる事は少ない」と、瀬付きのサバの価値を表現していますが、「関あじ」「関さば」は「瀬付き」だからこそ独特の美味しさがあるのでしょう。 特にこの「関さば」について、最近興味ある研究結果が報告されているので少し詳しく触れてみましょう。研究なさったのは、大分大学教育学部の望月聡講師で、平成3年に行われた日本水産学会で発表されました。また、それに先立ち、研究結果の概略が、朝日新聞や日本経済新聞にも取り上げられたので、ご存知の方もいるかもしれません。 望月先生は、「関さば」と、一般のマサバとの成分を分析、脂の含有量、腐り具合などを比較しました。その結果、腐り具合などの結果については。後で触れますが、脂の含有量は一般のマサバでは、体のどこの部位でも季節変動が激しかったのですが、「関さば」の場合は小さく、年間を通じてほぼ一定の値だったとの事です。刺身の美味しさは、脂の量が多すぎても少なすぎてもダメで、「関さば」は脂肪の変化が少なく、程良い量で一定しているため年間を通じて刺身で食べられるわけです。 おそらく、年間水温の変化の少ないことが、脂肪の量の変化が少ないことに影響しているのでしょうが、何はともあれ、「瀬付き」のサバなればこそ、美味であるというわけです。
このようにして、大事に一本釣りで漁獲された「関あじ」「関さば」は、漁船が帰港すると、まず、漁協の網いけすに移されます。 ここで、他と違う事は、重さを計らない事です。水面からの魚の大きさを見ておおよその重さを見て取り、船のいけまから一気にすくい取るのです。見ただけで重さを知るには、かなりの熟練を要します。これを「面(つら)買い」といいます。なぜこのような方法をとるのかというと、重さを計ると、魚が暴れて体が擦れる上に、筋肉に無理がいって、身が割れる恐れがあります。これを防止しているのです。 また、その日釣れた魚を「新魚(あらいよ)」と呼んでいますが、この魚は極度の興奮状態にあるため、活魚出荷する場合、必ず1日網いけすの中で落ちつかせなければなりません。そして、決して、前日釣れた魚を痛めるからです。こうなると、魚種別に、そして釣れた日別にいけすが必要になり、管理が大変です。しかし。品質保持のために、このような管理をあえて行っています。 東京などの遠隔地に輸送する場合や、消費者に直接販売する場合など、必ず「活けじめ」という処理をします。これは、網ですくい上げて即座に包丁で脊髄を切断し、血を抜き、氷で冷やす作業です。これも一匹一匹手作業で行うし、熟練も要し、大変な作業です。しかし、どの処理を怠っても「関あじ」「関さば」の持ち味が損なわれてしまいます。
大分県漁業協同組合佐賀関支店は、「関あじ」「関さば」安定供給に向けて、たゆまぬ努力を重ねて参ります。今後一層、「関あじ」「関さば」を御愛顧下さいますようよろしくお願いいたします。